「映像の世界とは違って、芝居の世界はとても原始的。役者、スタッフ、観客が、いつも同じ空間に共存しています。
でも、そこには常に高いレベルの臨場感や興奮がある。芝居のそういう面が好きですね。
人によって受けとめ方や反応が違うので、観客から毎回違うエネルギーを得られるところも」
目を輝かせて、熱く舞台の話をする小川さん。
女優のように華奢な肢体と端正な顔立ちで、魅力たっぷりの彼女は、若干26歳。
4年前ニューヨークにやって来て、こちらの大学院で舞台演出を勉強。学生時代に仲間と結成した劇団『ウォークン・グレーシャー・シアターカンパニー』の作品が、つい最近イーストビレッジの劇場で約1カ月に渡って上演された。
演出家は、もちろん小川さん。劇団結成以来の大スケールのこの作品は、彼女にとっては本格的なニューヨーク・デビュー作となった。
公演が実現し、新進演出家としてニューヨークで作品を披露する最高のチャンスをつかまれたわけですが、今の心境はいかがですか?
「胸がいっぱいです。英語さえ、きちんと話せない私に、こんなチャンスをよくぞ与えてくれたなぁ、と。劇団や観客の皆さんに感謝しています。
上演中に客席の反応をうかがっているときは、本当に緊張しました。胸がドキドキ高鳴って、死ぬかと思いました(笑)」
演出家の役割とは何なのでしょうか?
「舞台上で起こっていることの全責任は演出家にある、といわれています。ですから、演技、衣装、舞台デザインなどをトータルで指揮監修していかなければなりません。
同じ作品でも演出家の解釈、感性、コンセプトによって、舞台のスタイルもガラリと変わります。
いかに独創的、魅力的な舞台を演出できるか、という部分が演出家の力量であり、やりがいでもあります」
小川さん流の演出スタイルとは、どのようなものでしょう?
「米国のリアリズム演劇の場合は、多くの演出家が心理や理論をベースに演出しますが、私は視覚的要素も重視しています。
原作を読んでいると“こういう見せ方をしたら面白いんじゃないかな?”と、頭の中にビジュアルが浮かんでくるんです。
その映像に心理面をプラスし、核となるメッセージを観客に伝えるスタイルで、私らしさを表現しています」
ニューヨークの演劇界はいかがですか?
「独自の価値観やアプローチを持った多様な人々が、世界から集まってチャレンジしています。だから、当然競争は激しくなります。
でもその一方で、異文化に理解のある場所ですね。つまり、異文化を受け入れ、きちんと評価してくれる土壌と寛容さがあるんです。
観客も、斬新でユニークなものに関心を持っていて、率直に反応してくれる。それをとてもうれしく思います」
20代の若さで、ニューヨーク公演デビューという夢ををかなえた小川さん。こんなに若くしてデビューできたのは、もちろんキラリと光る演出スキルがあったからに違いない。
しかしそれだけではなく、謙虚に学ぶ彼女の姿勢や努力が実を結んだのではないだろうか。
(第二話に続く)
(企画・インタビュー・構成/坂之上洋子・吉藤美智子、写真/詩乃コバント)
|