ストレス発散は演劇鑑賞と読書。アバンギャルドな個性派の演劇が好みで、最近は太宰治の作品にハマっているという。
「最近少し落ち込んでまして…。こういうときは、とことん落ち込んでしまおう。だったら太宰しかないな、と(笑)」
どうして沈まれているのですか?
「色々あるのですが、やはり言葉の壁を実感しています。演出家は、通常“動詞”を使って、役者にアクションを出すべきだといわれています。
“あと一歩で私の欲しい演技になるのに…”というときに、日本語なら演技の指示を率直に伝えられる。
でも英語では、私の微妙な気持ちを適切に表現する言葉が、瞬時に出てこない。
そういうときはすごく悔しいですね。
特に、リハーサルで空気がピンと張り詰めているときに、私の言葉不足でペースが乱れたりすると、ドーンと落ち込みます。
それに加えて、若い芸術家を支援する日本の奨学金制度に応募した際、審査員からきつい批判を受けたこともあって、日本からも米国からもなんとなく拒絶されたような気がしまして…」
海外で夢を追いかけることは素晴らしいことだ。
しかし、特に世界を動かすメトロポリス、ニューヨークで成功をつかむのは容易ではない。努力や実力に加え、運、資金、ネットワークが必要なケースも多い。
挫折もあるだろうし、アイデンティティ・クライシスに悩むことも少なくないだろう。
演出家としてどんな夢をお持ちですか?
「演出家の野田秀樹さんを尊敬しています。彼のような、大きな世界観を感じられる作品を演出してみたいですね。
いずれは、アーティストの登竜門ともいえる『ブルックリン・アカデミー・オブ・ミュージック』での公演を実現させたいと思います。
もっと欲張っていうなら、オペラのような作品も手がけてみたい。まだ先の話ですけれど」
現在、アルゼンチン人、米国人、スコットランド人の演出家とのコラボレーション・グループ『International Artist
Inc.』に参画し、三島由紀夫のシリーズ作品を四人四様のアプローチで演出している。
またニューヨークで活躍する日本人アーティストを支援するサイトを共同で設立するなど、新たなプロジェクトにも前向きに取り組んでいるという。
近い将来、ニューヨークで生きる日本人女性ならではの視点から演出した“大きな世界観”を持つ作品に出会えることを、心から期待したい。
(企画・インタビュー・構成/坂之上洋子・吉藤美智子、写真/詩乃コバント)
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